消費税はどうなるの? 不動産賃貸業を行う事業者が受け取る原状回復費用について

不動産賃貸業を行う事業者(法人でも個人事業主でも同じ)が入居者から受け取る原状回復費用について、

「消費税はかかるの?」
「消費税の事業区分はどうなるの?」

とのご質問を受けることがあります。

 

アパートに入居する際、借主が、家主に敷金や保証金を一時的に支払っておき、退去時に敷金から未払家賃・修繕費等を精算するのが一般的だろうと思います。

家主側における、入居者が退去する際の消費税の取扱いはどうなるのでしょう?

例えば、次のような場合はいかがでしょう?

退去時(入居時に20万円の敷金を預かっている)
敷金20万円のうち、15万円を入居者に返金し、5万円を原状回復工事費用として敷金から差し引いた場合、仕訳にすると

(借方) 敷金  20万円
/ (貸方) 現金        15万円
/ (貸方) 修繕費(雑収入)  5万円(税抜き)

になります。

この場合、消費税の取扱いはどうなるでしょう?

国税庁質疑応答事例 によると、

「建物の賃借人には、退去に際して原状に回復する義務があることから、賃借人に代わって賃貸人が現状回復工事を行うことは賃貸人の賃借人に対する役務の提供に該当します。
したがって、保証金から差し引く原状回復工事に要した費用相当額は課税の対象となります。」

つまり、(貸方)修繕費5万円については、課税売上になり、消費税がかかってくることになります。

では、会社が簡易課税制度をとっていた場合の事業区分はどうなるんだろう?

う~~~ん・・・難しいところですが、
結論は、原状回復工事の内容によります。

その内容が、建物の改装・クロスの張り替えなど、『建設業』(日本標準産業分類より)に該当する場合は、「第三種事業」に該当します。

その内容が、畳の表替えや簡単な清掃業務など、『サービス業』(日本標準産業分類より)に該当する場合は、「第五種事業」に該当します。
(ちなみに、原状回復工事は『不動産業』(日本標準産業分類より)には該当しないため、「第六種事業」には該当しないようです。)

第三種事業に該当するものも、第五種事業にしてしまいがちなので、要注意です。

仮に、216,000円(税込み)の原状回復費用が、第三種事業に該当するものであったにもかかわらず、これを第五種事業として申告するだけで、原則的には、3,200円(216,000円×8/108×20%=3,200円)余分に消費税を納税することになります。
(消費税簡易課税制度の特例計算をするケースもあるので、金額が異なることもあります。)

細かいところになりますが、こういった微差が積み重なると、想定していた以上に、支払う税金に差がでてきます。

実態に即した処理を心がけることで、今回のように無駄な税金を支払うこともなくなります。